Japanese
English
特集 クライオ電顕が解き明かす神経変性疾患のメカニズム
はじめに
Introduction
長谷川 成人
1
Masato HASEGAWA
1
1東京都医学総合研究所 脳・神経科学研究分野
pp.1109-1110
発行日 2022年12月24日
Published Date 2022/12/24
DOI https://doi.org/10.32118/ayu283131109
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- Abstract 文献概要
アルツハイマー病,パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患は原因が不明で,いまだ有効な治療法がない難病である.神経変性疾患研究は,患者脳の形態学的観察,疾患特徴的な変化や病理構造物を特定する神経病理解析,病理構造物の構成成分の生化学的・免疫化学的同定,さらには質量分析による正常と異常の違いを徹底的に分析する蛋白化学的手法によって進められてきた.1990年代ごろから原因遺伝子をみつける分子遺伝学が盛んとなり,さまざまな遺伝子が発見されたが,その一部はまさに患者脳の特徴病理を構成するタンパク質の遺伝子であった.地道な神経病理,生化学解析からみつかった蓄積タンパク質の異常が単なる変性の結果ではなく,原因そのものであることを示すこととなった.そして近年,クライオ電子顕微鏡(以下,クライオ電顕)解析の技術革新により,患者脳内に蓄積する異常タンパク質の構造が次々と解明される時代となった.
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