Japanese
English
シンポジウム 精神医学研究の到達点と展望
病理構造物の解析から導かれた精神神経疾患の新しい考え方―細胞内異常蛋白質伝播仮説
Abnormal Protein Propagation Hypothesis based on Biochemical Analyses of Pathological Inclusion Bodies in Neurodegenerative Diseases.
長谷川 成人
1
,
新井 哲明
2
,
野中 隆
1
,
亀谷 富由樹
1
,
秋山 治彦
1
Masato HASEGAWA
1
,
Tetsuaki ARAI
2
,
Takashi NONAKA
1
,
Fuyuki KAMETANI
1
,
Haruhiko AKIYAMA
1
1東京都医学総合研究所認知症プロジェクト
2筑波大学大学院人間総合科学研究科精神病態医学分野
1Dementia Research Project, Tokyo Metropolitan Institute of Medical Sciences, Tokyo, Japan
2Graduate School of Comprehensive Human Sciences, Tsukuba University
キーワード:
Ubiquitin
,
FTLD
,
TDP-43
,
Tau
,
Alpha-synuclein
Keyword:
Ubiquitin
,
FTLD
,
TDP-43
,
Tau
,
Alpha-synuclein
pp.1201-1206
発行日 2011年12月15日
Published Date 2011/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102050
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
アルツハイマー病(AD)やレビー小体型認知症(DLB)に代表される老年期精神神経疾患にはその病気を定義づけるような特徴的病理構造物の出現が認められる(図1)。1907年にドイツの精神科医,Alois Alzheimerが,ADの最初の患者の脳組織の異常病理について発表を行ってから約100年が経過したが,病理構造物の観察から始まった精神神経疾患研究は,異常構造物の本体の同定,さらには分子レベルでの構造解析を経て,いま新たな展開を迎えようとしている。
すなわち,これまで全く不明であった多くの変性疾患の発症および進行の分子機構が細胞内異常蛋白質伝播の考え方によりシンプルに説明できる可能性がでてきた。がん細胞が広がることによってがんが進行するのと同じような考え方である。この仮説に関して,いま理論的説明と実験的裏付けを持った検証が始まっている。
本稿では,はじめに前頭側頭葉変性症,筋萎縮性側索硬化症の特徴的病理構造物の構成成分として同定された新規分子TDP-43の解析について述べ,次いでタウ,αシヌクレインを含めた異常病理蛋白質の解析から導かれた,精神神経疾患の病態形成機構の基本的考え方について議論したい。
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.