特集 精神療法における治癒機転
第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
はじめに
懸田 克躬
1
1順天堂大学神経科
pp.237
発行日 1967年4月15日
Published Date 1967/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201172
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精神療法における治癒機転に関するシンポジウムを企図した理由は,精神療法における真の治癒機転の究明が実はけつして明らかにされてはいないという考えからであります。もちろん,いろいろの精神療法が提唱され,かつ,実施されて治療効果をあげていることはみなさんのご承知のごとく事実であります。そしてその治癒という現象に対しては,その精神療法の方法論の背景となる神経症論,あるいは人格理論にもとづいての説明はなされていることも私どものよく知るごとくであります。
たとえば,精神療法にとつて適応症例といいうるであろう強迫神経症を例にとつてみましよう。強迫神経症の成因,本態あるいはその治療の方法とその理論的根拠とに関する理論あるいは主張の数多く見られることはどうしたわけでありましようか。各人が各人の神経症に関する理論と治療法とを身につけているといつても過言ではないのではありますまいか。そして,このような事態はけつして科学というにふさわしい理論にとつて好ましい,あるいは妥当するものではあるまいと思われます。
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