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特集 クライオ電顕が解き明かす神経変性疾患のメカニズム
ALS患者脳に蓄積するTDP-43線維の構造
Structure of TDP-43 filaments accumulating in the brains of ALS patients
長谷川 成人
1
Masato HASEGAWA
1
1東京都医学総合研究所 脳・神経科学研究分野
キーワード:
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
,
前頭側頭葉変性症(FTLD)
,
TAR DNA binding protein of 43kDa(TDP-43)
Keyword:
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
,
前頭側頭葉変性症(FTLD)
,
TAR DNA binding protein of 43kDa(TDP-43)
pp.1133-1137
発行日 2022年12月24日
Published Date 2022/12/24
DOI https://doi.org/10.32118/ayu283131133
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TAR DNA binding protein of 43kDa(TDP-43)は核に局在するヘテロ核リボ核タンパク質の一種で,正常では遺伝子の転写やその後のpre-mRNAの転写後修飾に関与するタンパク質である.筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭葉変性症(FTLD)の患者では線維化して細胞質や突起内に蓄積し,正常な機能を果たせなくなると同時に細胞に障害を及ぼす.今回,ALSおよびFTLD剖検脳の前頭葉ならびに運動皮質から,TDP-43線維を含む試料を調製し,MRC分子生物学研究所で低温電子顕微鏡(クライオ電顕)解析を実施し,その構造が明らかとなった.興味深いことに,その線維中心はらせん軸に垂直な方向に,これまで報告のないダブルスパイラル状の折り畳み構造をしていた.複雑なアミノ酸組成を持たない領域が線維の中心を形成しており,構造的にも化学的にもユニークな表面構造であった.この結果はTDP-43凝集を伴うALSやFTLDの分子病態メカニズムの解明だけでなく,診断プローブ,治療法の開発の役立つことが期待される.
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