ミトコンドリア膜透過性遷移を介したネクローシス

Necrosis regulated by mitochondrial permeability transition

　ミトコンドリア膜透過性遷移（mPT）は，カルシウム依存性に起こる，ミトコンドリア内膜の非選択的透過性亢進現象である．mPTはミトコンドリアの膜電位消失，膨潤，そして最終的には破裂へと至る．ミトコンドリアはエネルギー産生の中心であり，その機能不全はATPの枯渇によるネクローシスを引き起こす．一方で，ミトコンドリアはアポトーシス誘導の中心的役割を果たしていることも知られている．そのため，mPTの細胞死への関与が長年議論の対象になっていたが，mPTの制御因子であるシクロフィリンD（CypD）のノックアウトマウスを用いた解析から，アポトーシスへの関与は否定的で，ネクローシスの一部を制御していることがわかった．また，mPTを介した細胞死が虚血再灌流障害にも関与していることが明らかとなり，心筋梗塞などに対してmPTを標的とした治療法開発も進められている．