ミトコンドリア・ミオパチー

Mitochondrial myopathies

I．はじめに

　ミトコンドリアの形態異常は，いわゆるミトコンドリア・ミオパチーといわれるもののほかに，種々の紳経筋疾患で見られ^44），また，実験的にも虚血により作れるので^71,75,90），特異性を欠いている。しかし，非特異的にミトコンドリア異常が見られたという報告の多くは，電顕的観察のみであり，一部のもの^160）以外，ragged-red fiberの存在は見られていない。したがって，それらの報告例に比し，いわゆるミトコンドリア・ミオパチーでのミトコンドリア異常の程度は量的にはるかに大きいといいうるであろう。

　ミトコンドリアの形態異常は骨格筋以外に，心筋_94），脳^1,2,57,97），汗腺^89），甲状腺^163），膵臓^163）など種々の臓器で見られているが，とくに肝臓での報告は多く，肝生検の30％に結晶様封入体などの異常ミトコンドリアが見られる^103）。その病態も種々であり^103），正常者の肝臓でも35％^168）に見られている。また，外眼筋では，正常者でも，骨格筋では異常とされるような形態のミトコンドリアが普通に見られる^107）。このことは，ミトコンドリア・ミオパチーで見られるミトコンドリアの形態異常は，正常者のミトコンドリアの代謝過程でも一時的に見られるものであり，また，代謝障害に伴ない生ずるとしても，その代謝障害は，一部のミトコンドリアでのみ起きている場合もあることを示すのかもしれない。

　The terminology of "mitochondrial myopathies"represents the diseases which mainly involve the ocular or skeletal muscles, and also represents the muscle involvement in the group of disorders which showed mitochondrial abnormalities in the skeletal muscles.