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特集 体細胞モザイク――後天的ゲノム変化がもたらす未来
SNPアレイデータによる血液のY染色体モザイク解析
Analysis of the mosaic loss of Y chromosome using SNP array data
鎌谷 洋一郎
1,2
,
寺尾 知可史
2
Yoichiro KAMATANI
1,2
,
Chikashi TERAO
2
1東京大学新領域創成科学研究科
2理化学研究所生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チーム
キーワード:
モザイク型Y染色体喪失(mLOY)
,
ゲノムワイド関連解析(GWAS)
,
多遺伝子形質(polygenic trait)
,
SNPアレイ
Keyword:
モザイク型Y染色体喪失(mLOY)
,
ゲノムワイド関連解析(GWAS)
,
多遺伝子形質(polygenic trait)
,
SNPアレイ
pp.1198-1202
発行日 2022年6月25日
Published Date 2022/6/25
DOI https://doi.org/10.32118/ayu281131198
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1人の男性個体における細胞集団に,Y染色体が喪失した系統と維持している系統が共存するモザイク型Y染色体喪失(mLOY)が比較的頻繁にみられることが半世紀以上前から知られていたが,大規模な集団における特徴やその発症要因はわかっていなかった.現在ではSNPアレイデータを応用してmLOYを推定することができるようになり,特に血中細胞を中心として研究が進んでいる.血中mLOYの発生は年齢と喫煙の影響を強く受け,若い集団では5%以下にしかmLOYを示す人がいないこともあるが,93歳以上の集団では半数以上がmLOYを持っていることがわかった.また,血液腫瘍の発生と関連することは以前より知られていたが,非血液腫瘍との関連を示す複数の結果が報告されている.さらにmLOYの発生は,100以上の感受性バリアントを持つ多遺伝子形質(polygenic trait)であることがゲノムワイド関連解析(GWAS)により明らかとなった.発見された感受性遺伝子を詳細に検討すると,細胞周期の調節とDNA修復に関わる遺伝子が豊富に含まれていた.mLOYの解明により,さらなるゲノム医療の実現へと貢献することが期待される.
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