Japanese
English
特集 ミトコンドリア病――病態解明を基盤とした治療薬開発
体細胞におけるミトコンドリアゲノム置換技術
Mitochondrial genome replacement in somatic cells
五條 理志
1
Satoshi GOJO
1
1京都府立医科大学大学院医学研究科人工臓器・心臓移植再生医学
キーワード:
ミトコンドリアゲノム
,
ミトコンドリアゲノム置換細胞(MirC)
,
ヘテロプラスミー
,
ミトコンドリア病
,
ゲノム水平移動
Keyword:
ミトコンドリアゲノム
,
ミトコンドリアゲノム置換細胞(MirC)
,
ヘテロプラスミー
,
ミトコンドリア病
,
ゲノム水平移動
pp.1128-1134
発行日 2022年6月18日
Published Date 2022/6/18
DOI https://doi.org/10.32118/ayu281121128
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
核ゲノムとはきわめて異なる特性を有するミトコンドリアゲノムは,細胞膜を含めた3枚の膜構造の存在により,近年まで直接介入することができないものであった.その変異によって引き起こされるミトコンドリア病の根治療法は,近年まで糸口も見出せない状態であり,治療開発は二次的に引き起こされる障害の緩和をもたらす創薬開発が中心であった.体細胞におけるミトコンドリアゲノムを置換するプロトコールは,既存のミトコンドリアゲノムを部分的に削減し,エネルギー枯渇を一時的に誘発することで細胞の貪食能を亢進させ,引き続き単離ミトコンドリアを隣接させることでそれらの内在化を引き起こすものである.内在化された外来ミトコンドリアは既存ミトコンドリアと一時的に接触し,外来ミトコンドリアゲノムを含むヌクレオイドが既存ミトコンドリアマトリックスに移動することで定着し,その機能を発揮する.定着した外来ミトコンドリアゲノムがホモプラスミーとなる完全置換が起こっていることを確認し,ミトコンドリアゲノム置換法と名づけた.ミトコンドリアゲノムの変異は老化,癌,免疫に大きく関与しており,当該変異への介入方法の開発はミトコンドリア病の根治療法の開発とともに,さまざまな疾患治療に新たな戦略を提供することになると考えている.
Copyright © 2022 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.