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第1土曜特集 自殺の予防と危機・救急対応――新たな局面を迎えた日本の自殺対策にどう対応するか
自殺予防研究の動向
臨床での活用が期待される自殺の生物学的知見
Biological prospects of suicide for clinical application
大塚 郁夫
1,2
,
菱本 明豊
3
Ikuo OTSUKA
1,2
,
Akitoyo HISHIMOTO
3
1神戸大学大学院医学研究科精神医学分野
2コロンビア大学精神科
3横浜市立大学大学院医学研究科精神医学部門
キーワード:
バイオマーカー
,
機能的磁気共鳴画像法(fMRI)
,
ポリジェニックリスクスコア(PRS)
,
GTF2IRD1遺伝子
Keyword:
バイオマーカー
,
機能的磁気共鳴画像法(fMRI)
,
ポリジェニックリスクスコア(PRS)
,
GTF2IRD1遺伝子
pp.29-34
発行日 2021年10月2日
Published Date 2021/10/2
DOI https://doi.org/10.32118/ayu2790129
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“自殺の生物学的知見” の探究は,①自殺者試料入手の困難さ,②死後組織研究の限界,③自殺モデル動物の欠如などから,他の精神科領域に比べて大きく遅れており,臨床現場への進出間近というバイオマーカーは現時点で存在しない.しかし,近年の脳機能画像解析や網羅的ゲノム解析の進展により, “候補遺伝子・経路から自殺の生物学的機序を推定する” 従来の手法が孕むバイアスを解消し,併存精神疾患などの影響を越えた自殺独自のリスクを,科学的公平性をもって描出できる可能性がでてきている.本稿では,それらの例として,自殺に関連する機能的磁気共鳴画像法(fMRI)やポリジェニックリスクスコア(PRS)の知見に重心を置いて紹介した.一方で,生物学的な自殺リスクを知らされることが本人や家族にどのような影響を及ぼすかなど倫理的側面について,慎重な議論を重ねていく必要がある.
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