FORUM 日本におけるワクチン不信を巡る謎・4(最終回)
20世紀後半から21世紀におけるワクチン
-――インフルエンザ,HPV,COVID-19
アンドリュー ゴードン
1
,
マイケル ライシュ
2
1ハーバード大学歴史学部
2ハーバード大学公衆衛生大学院武見国際保健プログラム
pp.184-189
発行日 2021年7月10日
Published Date 2021/7/10
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27802184
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20世紀後半におけるインフルエンザワクチン
20世紀後半,日本は,学童に対するインフルエンザワクチンの集団接種を行った世界で唯一の国であった.その背景には,歴史的な経緯がある68).1948年に制定された予防接種法にはインフルエンザワクチンは含まれていなかったが,1957年のアジア風邪のパンデミックを受けて1962年に学童へのインフルエンザワクチン接種を開始した.1968年の香港風邪のパンデミックを機に,政府はインフルエンザ対策に一層力を入れるようになった.他の国では一般的なインフルエンザ対策は,高齢者や免疫力が低下した人などリスクの高い人を対象に行われるが,日本では学童のみに集団接種が行われた.1976年に予防接種法が改正され,インフルエンザが対象疾患に指定されたことで,日本では学童へのワクチン接種は義務となった.学校での感染を抑制することで,社会全体のインフルエンザ発生を抑制することを目的としたのである.歴史的に見れば,この決定は,日本の “インフルエンザ予防接種政策の混沌の始まり” であったとも言われている69).
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