FORUM 日本におけるワクチン不信を巡る謎・1
19世紀後半から1920年代までのワクチンの位置づけ
アンドリュー ゴードン
1
,
マイケル ライシュ
2
1ハーバード大学歴史学部
2ハーバード大学公衆衛生大学院武見国際保健プログラム
pp.1002-1006
発行日 2021年6月12日
Published Date 2021/6/12
DOI https://doi.org/10.32118/ayu277111002
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世界各国でワクチンへの信頼度を調査したワクチン信頼度プロジェクト(Vaccine Confidence Project:VCP)は,日本を “世界で最もワクチンに対する信頼度の低い国” に位置づけた1).この調査は149カ国を対象に実施され,日本は安全性ではフランス,モンゴルと並んで,有効性ではモンゴル,モロッコと並んで,ワクチンの信頼度が最も低かった.VCPの研究者らは日本での信頼度が著しく低い理由を,2013年以降のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの安全性に関する懸念と関連づけている.しかし,本稿で紹介する日本におけるワクチン不信に関する研究は,より複雑な歴史的背景の存在を示唆する.日本でも150年以上前から,他の国々と同様に,ワクチンへの受容と抵抗,ワクチンによる被害,ワクチン接種の推奨と同時にそれに抵抗するための社会運動など,さまざまな歴史が混在している.近年になって,日本は “世界で最もワクチンへの信頼度が低い国の一つ” というイメージが定着したが,これは誤解を与える表現である.そこでわれわれは,日本におけるこの問題と歴史的背景,そして時間の経過とともにそれがどのように形成されてきたかを探ることとした.
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