FORUM 天才の精神分析――病跡学(パトグラフィ)への誘い・12
自然主義作家ゾラと19世紀医学
-――病跡学の余白に
中谷 陽二
1
1筑波大学名誉教授
pp.319-321
発行日 2021年1月23日
Published Date 2021/1/23
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27604319
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連載の末席に加えていただいたので病跡学の本筋からは外れた話題を一つ取り上げたい.ジャン・ルノワール監督の1938年の映画『獣人』はあまり知られていないが,主演のジャン・ギャバンと監督自身の二人のジャンが握手するシーンや,監督の父オーギュスト・ルノワールの絵をさりげなく借用した情景など,シネマトロジカルには興味のある作品である.原作はエミール・ゾラの同名の小説1)である.ゾラは自然主義を代表する作家であるとともに,ジャーナリストとしての活動やユダヤ人の軍人がスパイの汚名を着せられたドレフュス事件でのアピールなど,19世紀末のフランスの社会・文化に深く関わった人物である.一方で彼は自然科学・医学の進歩にも常に関心を向けていた.本稿ではこの点に着目する.
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