喫茶ロビー
作家・渡辺淳一先生
岩田 久
1,2,3
1名古屋大学名誉教授
2名古屋共立病院
3クリニックチクサヒルズ整形外科
pp.1110-1110
発行日 2019年9月1日
Published Date 2019/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei70_1110
- 販売していません
- 文献概要
私の好きな作家は渡辺淳一というと,整形外科医以外の友人の男の人も,女の人も一様ににやにやし,久(キュウ)さんも結構好きだなぁ,といった顔をされます.それは,『失楽園』,『化身』,『ひとひらの雪』,『別れぬ理由』など男女の奥深い情念,男女の愛について濃密に描いた作品の印象が広くいきわたっているからでしょうか.こんな時,渡辺先生が整形外科医師であり,札幌医科大学の講師であられたこと,大学を辞し,作家一本に決心された時は直木賞受賞以前であったことなど(その時お母さんの反対にあい,苦労されたことが小説『四月の風見鶏』に書かれている)を話すことにしています.不倫することを,「失楽園する」と表現することがあると聞きます.しかし『鈍感力』など哲学的なもの,初期の作品ですが先生自身の(私もそうでしたが)自伝とも思える『阿寒に果つ』はうぶな中学,高校時代の想い出を描いたものであり,先生にもそうした時代があったかと思うと嬉しくなります.ほかに歴史,伝記的作品も十分読み応えがあります.
© Nankodo Co., Ltd., 2019