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脳血管疾患後の摂食嚥下障害は,加齢や合併症をともなうことでさまざまな経過をたどる.今回,回復期リハビリテーション病院に入院後,経口摂取量が増えずに経鼻経管栄養を併用して経過し,その後本人の希望で胃瘻を造設せず,経口のみで経過をみた症例を経験したので報告する.【症例】80歳代後半,独居の女性.クモ膜下出血を発症し急性期病院にて治療後,回復期リハビリテーション病院へ入院した.覚醒の低下と嚥下機能の低下により経口摂取量が少なく,経鼻経管栄養との併用でリハビリテーションを実施した.経過中,水頭症の悪化で急性期病院へ転院し,治療終了後ふたたび回復期リハビリテーション病院へ入院した.【経過】水頭症は改善したが経口摂取量は増えず,ふたたび経鼻経管栄養との併用にて栄養管理を行い,日常生活動作(ADL)は大きく改善しないまま施設への退院調整となった.主治医は家族と相談し胃瘻造設の提案をしたが,本人はそれを拒否し,家族も本人の気持ちを受け入れ,主治医も賛同し,栄養補給経路は経口のみとした.経口摂取量は一時的に増えたがその後減少し,食形態の調整や介助方法,栄養補助食品の使用など栄養介入を行ったが摂取エネルギー量は必要量を満たせなかった.そこで,誤嚥のリスクを評価したうえで難易度が高い普通食に近い食形態に変更した.さらに,食事は介助をするのではなく自分で食べるようにしたところ,本人の表情はよくなり,食事への満足度は上がった.【考察】高齢の脳血管疾患患者はさまざまな要因が重なり,食事摂取量の低下が生じる.経腸栄養の実施で必要栄養量を確保することは栄養管理の一つの方法であるが,本人や家族がそれを望まない場合,多職種で患者に寄り添い,安全をある程度確保しながら患者の食べたいものを提供することや,自分で食べることをサポートすることは,本人のよりよい人生を支援することにもつながると考えられる.
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