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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化にともない急激に廃用症候群が進み,嚥下困難となり,経鼻経管栄養となることがある.今回,経鼻経管栄養にて栄養管理を行っていた患者が,多職種連携の栄養介入により食形態のアップと経口摂取量の増量を段階的に進めることができ,常食が食べられるようになった症例を経験したので報告する.【症例】70歳代前半の男性.COVID-19による両側性広範囲性肺炎で急性期病院に入院していた.投薬・気管切開・人工呼吸管理等の治療後,低栄養・嚥下障害となった.当院へリハビリテーション(以下,リハビリ)目的で入院したときは,3食経鼻経管栄養に加え,昼食時に一部経口摂取(コード2-1)をしていた.入院当初から,患者には「口から普通の食事が食べたい」という強い希望があった.【経過】栄養管理は前院の栄養情報提供書をもとに,3食経鼻経管栄養に加え,昼食時に一部経口摂取を開始した.入院日の昼食で嚥下機能評価を行い,言語聴覚士(ST)による直接訓練と間接訓練を開始した.入院当初,易疲労性があり,「口から食べたい」という意欲はあったが,経口摂取では昼食時にコード2-1を半量(250kcal)しか摂取できなかった.嚥下筋力の低下があり,筋力強化を図るためリハビリに加え,エネルギー量の確保とたんぱく質を強化した栄養管理を行った.嚥下能力の回復にともない,食形態のアップを行い,経口摂取の回数を増やした.【考察】本人の希望を尊重しながら,他職種と全身状態を共有し,栄養改善することができた症例であった.早食い傾向で誤嚥する危険性が高かったが,慎重に進めることで,嚥下状態を悪化させることなく,改善につながった.また,全身状態を改善させ,筋力アップをめざすため,たんぱく質の強化を重要視した食事の経口摂取を進めることにより経管栄養を離脱し,食形態を常食まで改善することができた.退院後も,良質のたんぱく質を含めたバランスのよい食事を継続していくことが重要であると考えられる.
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