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特別養護老人ホームに入居中の高齢者で,脳梗塞を起こし,後遺症と認知症状の進行から摂食嚥下障害が重くなり,低栄養状態のまま施設に帰園した利用者に栄養介入を行った.経口摂取量は増加しなかったが9ヵ月以上再入院に至ることなく穏やかに過ごすことができたため,その経過を報告する.【症例】入居時より摂食嚥下障害が認められた90歳後半の女性.左放線冠ラクナ梗塞で入院した.その後遺症と認知症による摂食嚥下機能の低下により経口摂取不良であったが,家族は「胃瘻などの栄養投与は考えていない.施設に帰ってできる限り経口摂取を継続したい」という思いがあり,人工栄養の選択はせずに帰園された.【経過】脳梗塞の後遺症や認知症症状の進行により十分な経口摂取量を得ることは困難で低栄養状態であったが,家族の意向により経口摂取のみで低栄養に対するアプローチを行うこととなった.むせや誤嚥のリスクが高く,介護職員は不安がある中,食事介助を行っていた.管理栄養士は処方されていた経腸栄養剤を活用しながら,食事介助を通して看護師・施設相談員を含む他職種からの情報をまとめ,食事開始前後の口腔ケア,摂取時の姿勢,一口量,食事を中止するタイミング等の計画を共有した.食事摂取量や体重の増加はみられなかったが,発熱等再入院に至るような体調不良を起こすことなく誕生会や敬老会を迎えることができた.【考察】低栄養状態で摂食嚥下障害があると,高齢の入居者は経口摂取のみでは栄養改善することは困難で,再入院に至るケースが多い.本症例も脳梗塞の発症により経口摂取のみでの栄養補給は困難であると判断されたが,家族の思いから胃瘻を造設しないで栄養介入することになった.施設管理栄養士は多職種と協働し,入居者に適した栄養管理と,食事調整だけでなく口腔ケアや姿勢,一口量等包括的な視点で栄養介入する必要があると考えられた.
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