- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
高齢者は,病気やけがによる長期入院で廃用症候群をきたすことが多い.今回,手術後の廃用症候群を原因とする摂食嚥下障害となった症例に対して,栄養介入と多職種による支援を通じて摂食嚥下機能が回復し,退院後の継続支援が有効であった症例を経験したので報告する.【症例】80代,男性.僧帽弁置換術,三尖弁形成術,左心耳閉鎖術を施行したが,術後に誤嚥性肺炎を合併して人工呼吸器管理となり,気管切開術が施行された.その後,人工呼吸器を離脱,気管カニューレを抜去し,経腸栄養管理で手術から5ヵ月後に当院へ転院となった.【経過】当院入院+2日の摂食嚥下評価時は,BMIは20kg/m2で,気管切開孔(以下,気管孔)は閉鎖しておらず,頻繁に粘液の噴出が認められる状態であった.また,嚥下造影検査(以下,VF)の結果,日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021(以下,学会分類)のコードOjの直接訓練可能と診断され,経鼻経管栄養と併用して言語聴覚士による直接訓練を開始した.その後,理学療法士による歩行訓練開始にともない想定以上に活動量が増加し,1ヵ月で約10%の体重減少を認めたことから,栄養量の増量を行った.歯科での摂食嚥下評価・栄養評価を定期的に実施し,3食経口摂取へ移行した.ただし,気管孔は閉鎖せず,痰や誤嚥物の噴出が時々認められた.介入+57日,BMIは19.9kg/m2,家族とほぼ同じ食事が食べられるまでに回復したが,二相性食物や噛み切りにくい食物は誤嚥リスクが高く,水分に薄いとろみが必要であった.そこで,食事時の注意点や必要栄養量等を家族に指導し,自宅退院となった.現在も定期的に,摂食嚥下外来で評価と栄養指導を継続している.【考察】経腸栄養から3食経口摂取へ移行する際,活動量の変化などの情報を多職種で共有し,必要な栄養量や水分量を定期的に検討することが重要である.誤嚥リスクの高い患者が自宅退院する際は,家庭環境に配慮した家族指導を行い,可能であれば退院後も定期的に栄養指導を継続することで,安心した在宅療養を行うことができる.
Copyright© 2023 Ishiyaku Pub,Inc. All rights reserved.