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延髄外側梗塞などのように延髄が損傷することで球麻痺による嚥下障害が生じる.今回,慢性腎不全を合併した延髄外側梗塞後の嚥下障害患者に栄養介入を行い,経口摂取へ移行した症例を経験したので報告する.【症例】70歳代,男性.延髄外側梗塞後の球麻痺による重度嚥下障害があり,経鼻経管栄養で栄養確保し,経口から毎食ゼリーを1個摂取していた.治療の過程で腎機能が低下し,入院時は倦怠感,易疲労感が著明にみられていた.【経過】介入開始後,エネルギー摂取量不足と腎機能の保存に対するアプローチを行った.経口摂取は,本人の希望もあり,ゼリーを言語聴覚士による訓練時に数口摂取し,腎不全用の経管栄養剤を併用しながら栄養量の増量を行った.腎機能の改善とともに倦怠感も軽快し,リハビリテーションも意欲的に行え,昼のみミキサー粥ゼリー・嚥下調整食2-2(1/2量)で経口摂取を再開した.徐々に摂取量も増加し,経口摂取のみで必要栄養量を確保できた.しかし,嚥下障害への病識が乏しく早食いで,一口量も多いため食上げをするには食べ方の修正が課題となり指導を行った.退院時には,嚥下調整食4の摂取が可能となった.自宅退院に向け,本人と調理担当の妻に腎臓食を活かした嚥下調整食4の調理方法を指導し,自宅退院となった.【考察】嚥下障害に加え,慢性腎不全による倦怠感や疲労感が経口摂取に影響している症例であった.腎機能に応じて,たんぱく質,カリウムの摂取量をコントロールすることで腎機能が軽快し,倦怠感が改善され,早期に経口摂取を再開できたと考えられた.本人に対して食べ方の指導を行い,咀嚼を十分に行って食べ物を流動化させることで嚥下調整食4までの摂取が可能となった.退院後に嚥下調整食4以上のレベルのものを食べてしまうリスクはあるため,ただ安全な食形態の食事を提供するだけでなく,食べ方を工夫することで安全に食べられる方法の検討や指導を行っていく必要がある.
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