専門管理栄養士がレクチャー! Case Reportに学ぶ摂食嚥下障害の栄養アセスメントと介入のコツ
脳梗塞後遺症による高度摂食嚥下障害患者への対応 患者の意向に寄り添ったチームアプローチが有効であった一例
松本 英子
1
1中谷外科病院 栄養部
キーワード:
栄養評価
,
経腸栄養
,
嚥下障害
,
摂食
,
脳梗塞
,
目標
,
チーム医療
,
栄養士
,
患者の意向
,
摂食機能障害
,
濃厚流動食
,
脳卒中リハビリテーション
,
共同意思決定
,
嚥下訓練
,
嚥下食
Keyword:
Nutrition Assessment
,
Deglutition Disorders
,
Enteral Nutrition
,
Eating
,
Decision Making, Shared
,
Goals
,
Patient Care Team
,
Stroke Rehabilitation
,
Patient Preference
,
Nutritionists
,
Brain Infarction
pp.568-572
発行日 2023年4月1日
Published Date 2023/4/1
DOI https://doi.org/10.32118/J01532.2023155314
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今回,脳梗塞後遺症の摂食嚥下障害患者に対して,患者の意向に寄り添ったチームアプローチにより経口摂取が再開できた症例を経験したので報告する.【症例】70代,男性.診断名は脳梗塞後遺症による高度の摂食嚥下障害.誤嚥性肺炎.経鼻経管栄養となっていたが,経口摂取することを切望していた.【経過】介入開始後,経鼻経管栄養の必要性を説明し,嚥下機能評価をもとに,嚥下調整食の経口摂取を開始した.信頼関係の構築を図るため頻回な食事場面の観察と,病棟訪問を行った.しかし嚥下調整食の受け入れが悪く,経口摂取量が少ない状態であった.チームとして「嗜好のこだわりが強く,病院食への不満があり摂取量が少ないが,対応困難な事例ではない.食へのこだわりは生きる意欲の表れである.できる限り本人の意向に寄り添い,経口摂取を再開することを目標とする」と認識の統一を図った.嚥下造影検査では,希望するカップ麺を嚥下調整食コード3相当に調整したものも合わせて評価した.その結果,摂取可能であった.その後,経口摂取量を増やすために,分割食として持ち込み食を導入した.そのことで前向きな発言がみられるようになり,意欲的に摂食機能療法に取り組むようになった.介入より約1ヵ月後,経鼻経管栄養から離脱し,安定した経口摂取量を確保することができた.【考察】本症例に対し,患者の意向に寄り添ったチームアプローチを行い,経鼻経管栄養から離脱し,経口摂取を再開することができた.「口から好きなものを食べて生きたい」という患者の意欲を重視し,患者・医療者双方が目標を共有することは,摂食嚥下障害患者の経口摂取獲得に有効であったと考えられる.
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