特集 胆道閉鎖症の研究update
施設症例数と自己肝生存率の検証
高見 尚平
1,2
,
川嶋 寛
3
,
藤代 準
2
Shohei Takami
1,2
,
Hiroshi Kawashima
3
,
Jun Fujishiro
2
1日本赤十字社医療センター小児外科
2東京大学医学部附属病院小児外科
3埼玉県立小児医療センター外科
pp.175-177
発行日 2024年2月25日
Published Date 2024/2/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000000727
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はじめに
胆道閉鎖症は新生児~乳児期早期に発症する原因不明の胆汁うっ滞性疾患である。標準治療として肝門部空腸吻合術(葛西手術)が行われるが,その半数以上が将来的には肝移植を必要とする予後不良な疾患である。胆道閉鎖症は1万出生に1人の頻度で発生する希少疾患であり,胆道閉鎖症全国登録2021年集計結果によれば2021年には77例が39施設から登録されている。この結果から多くの小児外科施設において年間1例以下の経験となっていることが推察される1)。欧州では胆道閉鎖症治療施設の集約化が進められており,英国では胆道閉鎖症治療を行う施設が15施設から3施設に2),フィンランドでは5施設から1施設に集約化された3)。集約化した結果,英国では葛西手術後約5年での自己肝生存率(native liver survival:NLS)が30%から51%に改善したとの報告がある2)。わが国での5年NLSは57.2%であり集約後の諸外国と比べて成績はよいようにみえるが,今後少子化によりさらなる症例数の減少が予想される胆道閉鎖症治療において,わが国でも施設の集約化が必要なのだろうか。本研究は施設症例数によってNLSが影響を受けるかどうかを明らかにすることを目的とし計画された。
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