特集 これならわかる性分化疾患
治療
内科的対応
菅野 潤子
1
Junko Kanno
1
1東北大学大学院医学系研究科発生・発達医学講座小児病態学分野
pp.1316-1319
発行日 2023年12月25日
Published Date 2023/12/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000000662
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はじめに
性分化疾患(disorders of sex development:DSD)は染色体の性,性腺の性,内外性器の性が非定型的である疾患群の総称で,さまざまな原因により発症し,多様な表現型を呈する1,2)。DSDにおいて,男性か女性かを容易に判断できない外性器を,「判別不明性器(ambiguous genitalia)」と呼ぶ3)。出生時に判別不明性器を呈しうる疾患で,生命予後の観点から見逃してはならない疾患として先天性副腎皮質過形成症があり,治療開始が遅れることのないよう糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドの補充を行わなければならない4)。法律上の性の決定においては,内分泌検査や画像検査を経て,小児内分泌科医・小児外科医・泌尿器科医・産婦人科医・形成外科医などの医療チームと患者両親との間で診断,生殖予後,合併症の情報を共有して,メリットとデメリットを十分協議したうえで,児の代諾者として両親が自律的に決定するのが妥当と考えられている5)。DSDでは原疾患の種類によらず,選択された社会的性に応じた治療を行っていく6)。法律上の性を決定するために最も重要な情報は,児が成人になったときのgender identity(性同一性)である。Gender identityの予測は難しいが,胎生期のアンドロゲン曝露や思春期のcontrasexualな二次性徴(5α還元酵素欠損症で女性として養育した場合のテストステロン作用による男性としての二次性徴発現など)の予測などの情報を提供し,両親が法律上の性を許容し,確信をもって養育できるように支援することが望ましい5)。
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