症例
初回マススクリーニング陰性で遅発性TSH著明高値を呈した甲状腺機能低下症
熊坂 衣織
1
,
菅野 潤子
1
,
三浦 啓暢
1
,
和田 陽一
1
,
梅木 郁美
1
,
鈴木 大
1
,
藤原 幾磨
2
,
大浦 敏博
3
,
呉 繁夫
1
KUMASAKA Io
1
,
KANNO Junko
1
,
MIURA Akinobu
1
,
WADA Yoichi
1
,
UMEKI Ikumi
1
,
SUZUKI Dai
1
,
FUJIWARA Ikuma
2
,
OURA Toshihiro
3
,
KURE Shigeo
1
1東北大学病院小児科
2仙台市立病院小児科
3仙台市立病院臨床検査科
pp.1753-1758
発行日 2022年10月1日
Published Date 2022/10/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000434
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はじめに
先天性甲状腺機能低下症(congenital hypothyroidism:CH)は,胎生期または周産期に生じた甲状腺の形態や機能異常による先天的な甲状腺ホルモンの分泌不全の総称である。甲状腺ホルモンは胎生期から乳幼児期にかけての神経髄鞘形成に不可欠であり,この時期の甲状腺ホルモンの不足は不可逆的な発育および発達障害をもたらす1)。わが国では,CHの新生児マススクリーニング(newborn screening:NBS)は1979年から施行され,早期発見・早期治療により障害の発症予防効果を上げてきた2~4)。CHの発症頻度は出生児2000~3000人に1人であり5),発見率はNBS対象疾患のなかでもっとも高い。ほとんどの自治体ではCHのうち原発性甲状腺機能低下症の早期発見を目的として,濾紙血中の甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone:TSH)高値をスクリーニング陽性の指標としている。TSHは早産低出生体重児の場合には,視床下部-下垂体-甲状腺系の未熟性により,仮にCHであっても偽陰性となることがある6,7)。このため,このような児においては初回検査の結果にかかわらず2回目のNBSが必要である8,9)。
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