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皮膚科の外来をしていると,「いつになったら治るのですか」「このぬり薬は全然効きません」などという不満を必ずといっていいほど頻繁に耳にします.なかには「早くからだを這っている虫を退治してくださいよ,先生!」というのもあるでしょう.不満を聞くと,医師としてあまりいい気持ちになれないのは人間だから当然のことだと思います.しかし視点を変えてみると,不満を言われるということは「この先生には言っても聞いてくれそう」という期待が少しは患者さんにあるのです.いわゆる恐い先生には不満を言うことすらできませんね.おそらく黙って帰ってしまいます.もし不満を聞いたら,それを生かすのが心療内科的な対応の一つです.虫退治はあとでお話するとして,通常の不満は会話が少ないところから発生します.忙しい診療で話なんかしていられないというのもごもっともです.しかし,ほんのちょっとした対応で不満が解消される場合もあるのです.「いつになったら治るのですか」に対して,患者さんの目を見ながら「この病気はね,いまのところ完治は難しいのですよ.でもね,いまあるお薬でできるだけのことをしようと私も思っているのですよ」と,若干申し訳なさそうな顔をして患者さんに説明します.その際に病気を理解しているかどうかの確認も行います.「このぬり薬は全然効きません」に対しては,患者さんの目を見ながら「ぬり薬をどこに一日何回塗っていますか」と使用方法を確認して,「ぬるときにすりこんでいませんか」「チューブの先で直接ぬっていませんか」など少し細かくぬり方を聞いてみます.ただし,外用薬は内服薬に比べてコンプライアンスが悪いので,できるだけシンプルに使い方を指導します.怖くて薬が使えなかったという患者さんには「一部分だけ使ってみませんか」といった提案をします.では,這っている虫退治はどうすればよいでしょうか?「精神科に行きなさい」と言ってしまうと怒ってしまい,精神科には行かずに他の皮膚科を転々としてしまいます.これはやや難しいですが,「まず虫が這って気持ち悪いでしょうから,その気持ち悪さをやわらげることからしてみませんか」「それから虫の退治を考えましょう」と言います.「そのためには精神病のお薬がごく少量でよく効くんですよ」と説明して処方をします.内服までこぎつけたら,あとはそう難しくありません.このように治療意欲を高める工夫に,心療内科的対応がとても役に立ちます.しかしながら,治療意欲を高める工夫がなされていない診療が多いと思うのは私だけでしょうか.(〒543-0035 大阪市天王寺区北山町10-31)
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