特集 胎児治療の進歩と今後の展望
胎児尿路疾患における羊水注入療法
小野 ひとみ
1
,
高橋 雄一郎
1
Hitomi Ono
1
,
Yuichiro Takahashi
1
1岐阜県総合医療センター産科・胎児診療科
pp.71-76
発行日 2023年1月25日
Published Date 2023/1/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000000334
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はじめに
先天性腎尿路異常(congenital abnormality of kidney and urinary tract:CAKUT)はさまざまな腎尿路の発生異常,形態異常,機能異常,およびそれらを複合した病態である。1,000出生に1~4例の頻度で発生し,胎児期に診断される胎児異常の約20%を占める。その予後は羊水過少の程度によって異なる1)。妊娠16週以降では羊水の主成分は胎児尿であり,羊水量の維持には胎児が尿を産生し,排尿することが不可欠である。CAKUTによる長期の羊水過少は児の肺低形成のリスクとなる。羊水過少を伴う腎尿路疾患は周産期領域においてPotter症候群として知られている。Potter症候群は1946年にEdith Louise Potter(1901~1993年)により報告された,古くからよく知られた胎児病の一つである。病理医のPotter氏は死産となった児の病理解剖から特徴を報告した。その特徴は,両側の腎無形成と特有の顔貌である。羊水過少を伴い胸郭や肺の低形成をきたし,顔貌は押しつぶされ,内眼角から頰部に異常な皺,大きく薄い耳介,小下顎,四肢の関節屈曲拘縮,内反足などであった2)。重度の肺低形成のため児の転帰はきわめて不良とされ,これまで救命の対象とならず看取りや人工妊娠中絶が選択されることが多かった。
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