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はじめに
短腸症候群など腸管不全(intestinal failure:IF)患児が充分に腸管順応できるまでは,水分管理や静脈栄養(parenteral nutrition:PN)の投与経路として中心静脈カテーテル(central venous catheter:CVC)が必須である。その中心静脈の閉塞はIFの患児にとって小腸移植以外の選択肢を失うリスクを内包するため1),中心静脈の温存は生涯の課題である。末梢静脈挿入型中心静脈カテーテル(peripherally inserted central catheter:PICC)は挿入時に全身麻酔を必要とせず病棟でも挿入可能であり,乳児期早期まではCVCとして十分活用できるが,カテーテル先端の位置が変わりやすく,中心静脈に先端が挿入できずにmidline catheterとして末梢静脈留置になる場合がある。また,径が細くて栄養状態を評価するためのまとまった量の採血ができない。IFの患児は,出生後12か月までの期間,腸管順応が不十分で栄養状態が不良であると,反復する腸炎やbacterial translocationによりカテーテル関連血流感染のリスクが高い2)。わが国でIF患児に最も広く利用されているvascular access device(VAD)はトンネル式カフつきカテーテルであるが,乳幼児にはカットダウン法で挿入することが多く,血管温存の観点から中心ライン関連血流感染(central line associated bloodstream infection:CLABSI)を疑っても容易に抜去することがためらわれる。エタノールロックの有用性が知られている3)が,血栓症が起こりやすいことも報告されている4)。
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