特集 常在微生物叢と小児疾患~腸内細菌叢の先にあるもの~
総論
腸内細菌叢と代謝産物
池田 貴子
1,2
,
木村 郁夫
1,2
IKEDA Takako
1,2
,
KIMURA Ikuo
1,2
1京都大学大学院生命科学研究科高次生命科学専攻生体システム学分野
2京都大学大学院薬学研究科薬科学専攻代謝ゲノム薬学分野
pp.1007-1011
発行日 2025年8月1日
Published Date 2025/8/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002508
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はじめに
腸内細菌叢は多種多様な細菌から構成される腸管内微生物群集であり,ヒトでは出生時から形成され,3歳までには安定するといわれている。腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)は代謝性疾患やアレルギー性疾患など,さまざまな疾患の発症や増悪化をひき起こすことから,腸内細菌叢と宿主生体機能との関連を知ることは疾病の予防や治療の観点からきわめて重要である。腸内細菌は宿主が摂取した食事の一部を代謝し,短鎖脂肪酸をはじめとするさまざまな生理活性物質を生み出すが,これらは血液を介して全身へと移行するため,腸管内だけでなく宿主全身の生体機能に関与する。Dysbiosisをひき起こす原因の一つに偏った食事が挙げられるが,これは特定の細菌の増殖が促されることで,細菌叢を形成する菌種の構成比が変化し,細菌叢から生み出される代謝産物の種類や量に影響を与えるためと考えられている。このことから,腸内細菌代謝産物が宿主の生体機能に与える影響を明らかにすることは,dysbiosisによる疾患の発症や増悪化の分子機序を解明し,疾患の予防や治療法の開発につながるものとして,大きな注目を集めている。

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