特集 常在微生物叢と小児疾患~腸内細菌叢の先にあるもの~
総論
粘膜免疫と腸内細菌叢
井中 将吾
1
,
篠﨑 浩平
1
,
徳原 大介
1
INAKA Shougo
1
,
SHINOZAKI Kohei
1
,
TOKUHARA Daisuke
1
1和歌山県立医科大学小児科学講座
pp.998-1006
発行日 2025年8月1日
Published Date 2025/8/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002506
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はじめに
粘膜免疫は呼吸器や消化管などをおおっている粘膜に備わる免疫システムであり,正(排除)と負(寛容)の免疫応答を巧妙に制御する独自の機構を備え,分泌型IgA抗体を中心とした粘膜バリアによって病原微生物を排除する一方,共生細菌や食物成分などヒトに有用なものは排除せず,制御性T細胞やIL-10による「免疫寛容・無視」という働きによって非自己有効成分として利用する(図1)。また,粘膜免疫システム,あるいはその特徴の一部は腸管だけではなく,呼吸器や生殖器,さらには乳腺や涙腺,肝臓・胆囊にも備わり,われわれの全身が粘膜免疫と密にかかわりながら健康が維持されている。このような粘膜免疫の機能や発達には,粘膜面や粘膜組織内に常在・共生する膨大な数の細菌叢,とくに腸内細菌叢が重要な役割を果たしている(図2)。

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