症例
家族内検索にて発見され,肝機能障害に対して酢酸亜鉛が奏効したWilson病の1例
西原 明子
1
,
服部 美来
1
,
窪田 幸世
1
,
那須野 聖人
1
,
渡邊 美砂
1
,
清水 教一
1,2
NISHIHARA Akiko
1
,
HATTORI Miku
1
,
KUBOTA Sachiyo
1
,
NASUNO Kiyoto
1
,
WATANABE Misa
1
,
SHIMIZU Norikazu
1,2
1東邦大学医療センター大橋病院小児科
2西多摩療育支援センター
pp.1717-1720
発行日 2024年11月1日
Published Date 2024/11/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002137
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
Wilson病は常染色体潜性遺伝形式をとる先天性銅代謝異常症である。銅の輸送にかかわるATP7B遺伝子の変異により,肝臓,中枢神経,角膜,腎臓などの臓器に銅が沈着することで肝硬変や錐体外路症状などをひき起こす1)。Wilson病は内服薬での治療が可能な数少ない遺伝性疾患であり,その薬物治療として,わが国ではD-ペニシラミンと塩酸トリエンチンの銅キレート薬ならびに酢酸亜鉛が用いられている。銅キレート薬は血液中の銅と結合し,尿中に排泄を促すことで除銅効果を発揮する。そのため効果の発現は比較的早く,尿中銅排泄量測定にて治療効果を確認することができる。それに対し,酢酸亜鉛は腸管粘膜上皮細胞において金属キレート作用をもつメタロチオネインの生成を誘導し2),メタロチオネインに結合した食物や消化液中の銅が,腸管上皮で吸収されるのを阻害し便中に排泄されことで除銅する3)。そのため,除銅効果の発現までに銅キレート薬に比べて時間がかかることが短所と考えられている。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.