特集 小児科医が知っておくべき筋疾患診療:遺伝学的理解と治療の最新事情
脊髄性筋萎縮症
新生児マススクリーニングの現状と課題
木水 友一
1
KIMIZU Tomokazu
1
1大阪母子医療センター小児神経科
pp.1972-1975
発行日 2023年12月1日
Published Date 2023/12/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001439
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はじめに
新生児マススクリーニング(newborn screening:NBS)は,新生児期(発症前)に発見し早期治療により障害を予防または軽減しようとする事業である。近年,治療法や検査法の進歩によりNBSの対象となる疾患が増加し,原発性免疫不全症,ライソゾーム病や脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)などの疾患がリストアップされている。SMAはこれまで治療法のない進行性疾患であったが,近年有効な治療薬が開発され疾患予後の改善が期待できるようになった。その有効性は早期治療により高まることがわかっており,すでに発症前治療の有効性も示されている1,2)。SMAは稀少疾患であり,疾患特性的にも認識されにくく通常診療での「診断の遅れ」が必発の疾患であるため,早期診断,早期治療の実現のためにSMA-NBSは有用な手段の一つと考えられる。すでにSMA-NBSは海外の複数の国で大規模に実施されており,その有効性と実践性が示されている3)。しかし,わが国では新規NBS対象疾患を迅速に公費NBSに組み込む体制がないため,SMA-NBSは拡大NBS(自費検査)という枠組みで,検査・診療体制構築が可能な自治体や地域に限り実施されている。2020年5月に千葉県で自治体単位の実装研究が開始されて以降,2023年6月時点において約30地域で実施されている。すでに国内でNBSを通して診断されたSMA患者は15例を超え,いずれの症例も早期治療につながっている。現状で十分な検査体制,診療体制構築ができればSMA-NBSは実施可能であるが,まだいくつか解決すべき課題が残されている。
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