特集 遺伝子検査―診断とリスクファクター
3.遺伝子診断の実際
コラム
新生児マス・スクリーニング検査
鈴森 薫
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科
pp.1500
発行日 2007年11月30日
Published Date 2007/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101459
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わが国では1977年に新生児マス・スクリーニング検査がスタートし,主に先天代謝異常症,内分泌異常症を早期診断し,早期治療により発達障害を予防することを目的に行われ,着実に成果を上げてきた.現在スクリーニングされている対象疾患はフェニルケトン尿症,楓糖尿病,ホモシスチン尿症,ガラクトース血症,先天性副腎皮質過形成,およびクレチン病の6疾患である.対象とされている疾患はすべて治療可能な疾患で,被検者にメリットが大きいので倫理的問題は少ないとされている.近年開発されたガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)による尿中有機酸分析やタンデム型質量分析計(TMS)による血中アシルカルニチン分析によって,古典的なガスリー法では検出できなかった有機酸や脂肪酸の代謝異常など,20種以上の疾患を1回の検査でスクリーニングできるようになった.そこで日本マス・スクリーニング学会では,それらの有用性と問題点についてここ数年にわたって検討されてきた.一方,有機酸や脂肪酸代謝異常症の新生児マス・スクリーニング検査が一般レベルで開始されれば,新たな疾患が加わるわけで,治療法とともに対応する特殊ミルクなどの開発が必要となるが,まだその体制は十分とはいえない.新生児マス・スクリーニング検査は世界的に普及しつつあり,その成果についても強い期待が持たれている.しかし,新生児マス・スクリーニング検査の成果を評価するには,疾患の自然予後を明確に認識していることが重要で,長期予後調査を基に各疾患の治療・予後改善に役立てる必要がある.
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