特集 小児科医が知っておくべき筋疾患診療:遺伝学的理解と治療の最新事情
総論1:一般小児科医が理解しておくべき筋疾患診療の全体像
筋疾患の発症メカニズム
小牧 宏文
1,2
KOMAKI Hirofumi
1,2
1国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター
2国立精神・神経医療研究センター脳神経小児科
pp.1847-1853
発行日 2023年12月1日
Published Date 2023/12/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001414
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
筋ジストロフィー
筋ジストロフィーは筋線維の変性・壊死を主病変とし,進行性の筋力低下をみる遺伝性疾患である。筋線維の壊死とそれに伴う再生が慢性的に行われる過程で線維化や脂肪変性が出現・進行し,筋量が減少することによって徐々に筋力低下が進行する。壊死線維にはマクロファージの反応に加えてリンパ球や好中球の浸潤を伴う炎症反応も認める。Duchenne型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)で欠損しているdystrophin蛋白は筋細胞膜の裏打ちをしていると考えられている。dystrophinに関連しているsarcoglycan,dystroglycanや基底膜の構成蛋白であるlaminin α2も含めて壊死の成因はそれらの蛋白の欠損による膜脆弱性で説明可能である。DMDでは膜の脆弱性に加えて,カルシウムイオンの調節機能異常,炎症,ミトコンドリア機能異常,活性酸素,線維化などの病態が複雑に関与していることが示されている。三好型で欠損しているdysferlinは膜蛋白であるが,障害を受けた膜の修復に関係することが想定されている。一方で,膜の脆弱性では説明できない疾患もあり,Eemery-Dreifuss型筋ジストロフィーで欠損しているemerinやlamin A/Cは核膜タンパクであり,肢帯型筋ジストロフィーの病因の一つはcalpain 3という酵素タンパクであるが,筋線維の壊死を誘導するメカニズムは不明である。顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーやlamin関連筋ジストロフィーでは炎症反応が目立つ場合がある。表1に主な小児期発症の筋ジストロフィーを挙げた。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.