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1 疾患概念
結核は感染性を有する結核患者から空気中に喀出された,結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を含む感染性飛沫核を経気道的に吸引し,肺内に到達することにより感染が成立する(初感染)。結核菌を含む飛沫核が口から吸引されても,気道線毛系に捕捉されたり,消化管に嚥下されれば感染にはいたらない。同居家族内に喀痰塗抹陽性肺結核患者が発生するなど,感染性飛沫核の濃厚な曝露を受けても感染にいたるのは25~50%程度とされている1)。肺内に吸入された結核菌は肺胞マクロファージに貪食され,貪食された結核菌は一部がマクロファージ内で増殖をくり返し,自ら侵入したマクロファージを殺して滲出性病巣を作る(初感染原発巣)。また,結核菌を細胞内に含む一部のマクロファージはリンパ行性に肺門部リンパ節に運ばれ,ここにも病変を作る。初感染原発巣と肺門リンパ節病変は結核初感染に伴う病理学的な変化であり,対になった2つの病巣を併せて「初期変化群」とよぶ。初感染後に獲得された結核菌に対して特異的な免疫により,マクロファージの殺菌能が高まり,多くのケースでは結核菌は初期変化群のなかで分裂を停止した状態にいたる(潜在性結核感染)。しかし,一部の例では初感染に引き続き,結核菌の増殖が続いて結核発病にいたる(一次型結核症)*。小児,とくに乳幼児では初感染後,引き続き発病にいたる例の頻度が高いことが知られており2),初期変化群からの病巣進展により肺門(縦隔)リンパ節結核,肺結核,粟粒結核,結核性髄膜炎,結核性胸膜炎などのかたちで発病する。潜在性結核感染の状態にいたった例は約90%が生涯にわたって発病することなく経過するが,加齢や疾病などにより宿主の免疫状態が減弱すると,初感染から長い時間を経て発病にいたる。このような発病経過を「内因性再燃」とよび,病型を「二次結核症」とよぶ。結核菌に感染し,特異的な免疫が成立した例で,新たな感染機会により再度結核菌に感染すること(外来性再感染)はまれとされていたが,菌の曝露量が多い場合や宿主の免疫能低下が著しい場合には再感染による発病がありうる。
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