特集 今知っておきたいゲノム医療と遺伝子治療―基礎から臨床まで
各論
遺伝子診断 未診断疾患イニシアチブ(IRUD)
鈴木 寿人
1
,
山田 茉未子
1
SUZUKI Hisato
1
,
YAMADA Mamiko
1
1慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター
pp.310-314
発行日 2022年2月1日
Published Date 2022/2/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000062
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はじめに
大学病院や小児専門病院では,遺伝性疾患が疑われるが,病名診断が不明の患者を担当することをしばしば経験する。患者や家族は確定診断を得るために多くの医療機関や診療科,専門医を渡り歩くように受診することが少なくない。この状況は海外でもみられ「diagnostic odyssey(診断のための長い遍歴)」とよばれ,解決すべき課題となっている。未診断疾患イニシアチブ(initiative on rare and undiagnosed diseases:IRUD)は,この「diagnositc odyssey」を終わらせるために始動したナショナル・プロジェクトである1)。2015年より日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development:AMED)によって開始され,現在も継続している。5000名をこえる患者がこれまでに参加し,網羅的ゲノム解析(エクソーム解析や全ゲノム解析)により約4割の患者の診断が得られた2)。診断率はとくに小児科年齢の患者で高い傾向がある。IRUDは「研究」をベースにしたプロジェクトであるが,「『研究者』のための基礎研究」ではなく「幅広い未診断疾患の『患者』のための医療システムの確立を目指す研究」を目指している。多くの小児科医が本プロジェクトを利用して,全国の未診断の患者のよい医療につなげていただければと願っている。
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