Japanese
English
特集 循環器疾患の遺伝子診断と遺伝子治療
血管疾患の遺伝子診断
Diagnosis and Treatment of Vascular Genetic Disorders
鈴木 亨
1
,
永井 良三
2
Toru Suzuki
1
,
Ryozo Nagai
2
1東京大学大学院研究科
2東京大学大学医学部循環器内科
1Department of Cardiovascular Medicine, The University of Tokyo
pp.1195-1197
発行日 1999年12月15日
Published Date 1999/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404910113
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遺伝子診断の目的は,遺伝子異常の特定であり,さらに遺伝子異常の検出を疾患の診断・予防・治療に結びつけることである.遺伝子解析は一般に患者のDNA(デオキシリボ核酸)を用いて行われるが,現在では,羊水・末梢血液からDNAを抽出し,PCRなどの分子生物学的手法を用いて変異遺伝子を簡単に短時間で検出することが可能である.遺伝子の変異が蛋白にコードされる翻訳領域に見つかれば(一部の疾患では非翻訳領域内の変異が知られている),その遺伝子がコードする変異蛋白質の構造・機能を類推し,疾患の発症との関わりを理解することができる.基本的に遺伝子異常は遺伝子産物の質,量あるいは両方に影響し,さらにその遺伝子産物をとりまく細胞内環境に影響を与える結果,疾患の基盤となる異常な細胞環境を築きあげる.すなわち,遺伝情報の記憶・伝達の媒体であるDNA(遺伝子)から生理活性を有する遺伝子産物である蛋白質まで情報が制御・変換される一連の過程のなかで,遺伝子情報に異常が生じると,結果的に最終産物である蛋白質に影響がでることになる(一部の疾患では中間産物であるRNAに影響する).蛋白質はアミノ酸残基から構成されていることから,変異によりアミノ酸の電荷やhydrophobicityが変わり,蛋白質全体の構造,フォールディングにまで影響が及び,結果的に蛋白質としての生理活性や相互作用因子をはじめとした環境に変化が生じる(図1).また,遺伝子異常が明らかにされれば,疾患モデルマウスの構築による細胞・組織レベルでの病態の解明も可能となる.
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