産褥数日後に大量出血したが，診察すると新たな出血はない

はじめに

　分娩後異常出血（postpartum hemorrhage：PPH）は，分娩後24時間以内に発生する「早期分娩後異常出血（primary PPH）」と，24時間以降に生じる「後期分娩後異常出血（late PPHあるいはsecondary PPH）」に区別される。米国産科婦人科学会は，late PPHを分娩後24時間〜12週間に生じる出血と定義している^1）。臨床的に問題となるlate PPHは，分娩後1〜2週間以内に約1％の女性に発生するとされる。その主要な原因として，胎盤付着部，特に胎盤血管床の復古異常に起因する胎盤床復古不全（subinvolution of placental site：SPS）が最も一般的である。他の原因としては，血流を伴う妊娠組織遺残（vascular retained products of conception：vRPOC）や仮性子宮動脈瘤（uterine artery pseudoaneurysm）が挙げられる^1）。しかしながら，SPSは主に病理組織学的診断に基づく診断名であるのに対し，vRPOCなどは主に画像所見に基づく臨床診断名であるため，臨床現場において両者を明確に区別することは困難である^2）。