特集 周産期医療のヒヤリ・ハット―医療事故・医療紛争を防ぐために 産科編
各論
産科危機的出血への備え
小寺 千聡
1
,
吉村 早織
1
,
近藤 英治
1
KODERA Chisato
1
,
YOSHIMURA Saori
1
,
KONDOH Eiji
1
1熊本大学大学院生命科学研究部産科婦人科講座
pp.969-974
発行日 2023年6月10日
Published Date 2023/6/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000980
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はじめに
産科危機的出血は,未だわが国における母体死亡の主要原因である。これまで産科危機的出血対応への対応ガイドライン(図1)1)作成や啓発活動,血管内治療の普及に伴い,危機的出血による母体死亡は減少傾向にあったが,2020年より再度増加傾向を示している2)。死亡症例の後方視的検討では,約1/3の症例が一次医療施設で発症していたこと,また迅速で適切な対応によって救命可能と考えられた事例が含まれていることから3),施設の規模にかかわらず,周産期医療に携わる全員が産科危機的出血や産科危機的出血に至る可能性をもつ分娩後異常出血への対応を理解し平時より備えておくことが肝要である。そこで本稿では,産科危機的出血の予防と対応について自施設での取り組みを中心に紹介する。
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