特集 周産期(産科)の手術の工夫―筆者はこうしている
子宮筋腫合併妊娠の手術(妊娠中と帝王切開時)
早田 桂
1
HAYATA Kei
1
1福山市民病院産婦人科
pp.1161-1165
発行日 2024年8月10日
Published Date 2024/8/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001692
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定義・概念・病態
子宮筋腫は,子宮平滑筋細胞を主な構成成分とする良性平滑筋腫瘍であり,子宮平滑筋中あるいはその周辺に発生する。婦人科腫瘍のなかで最も頻度が高く,30歳以上で20~30%,40歳以上で40%の女性が筋腫を有しているといわれる1)。妊婦年齢の上昇に伴い子宮筋腫合併妊娠の頻度は増加しており,子宮筋腫部位によっては帝王切開を余儀なくされる症例においても,妊娠末期の子宮筋は血流豊富で止血困難となる可能性があるため,帝王切開時の筋腫核出術は勧められないとするのが一般的であるが,一度の手術で子宮筋腫を除去できる利点も捨てがたい。帝王切開単独に比して帝王切開時の筋腫核出術では輸血率の上昇,手術時間の延長の傾向を認めたが,重篤な出血のリスクは同等であるとの報告もあり2),十分な説明のうえで本人が同意し,適切に選択された症例に対していくつかのポイントを押さえて施行すれば,帝王切開時の筋腫核出は決して難易度の高い手術ではないと考える。特に10 cmをこえるような子宮筋腫は部位により悪露排出の妨げや弛緩出血の原因にもなるため,できれば帝王切開時に筋腫核出を行いたいと考える術者も多いのではないだろうか(図1)。帝王切開時に筋腫核出を行う最大の長所は,術創が大きいため視野確保が容易く緻密な筋層縫合が可能であること,反面短所は子宮自体が大きく柔らかいため,筋腫の位置によっては開腹視野の割には筋腫が見え辛くなることと,出血のリスクである。
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