特集 周産期(産科)の手術の工夫―筆者はこうしている
子宮圧迫縫合(uterine compression suture:UCS)
高橋 宏典
1
TAKAHASHI Hironori
1
1自治医科大学産科婦人科
pp.1157-1160
発行日 2024年8月10日
Published Date 2024/8/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001691
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はじめに
1997年に掲載されたB-Lynch縫合のケースシリーズ1)は,分娩時異常出血の管理に一石を投じた。子宮切開層以外の部位を結紮し,止血を試みる方法をまとめて,子宮圧迫縫合(uterine compression suture:UCS)と呼称するようになり,現在,広く用いられている。筆者が医師になった2000年頃,UCSは広まっておらず,逆に御法度的な空気があった。剝離面からの出血は収縮を薬剤で促すか,剝離面を直接Z縫合するしかない,という考え方が主流であった。ところが,B-Lynchの報告以降,圧迫縫合によって子宮収縮および剝離面からの止血を試みる手術技法が次々と報告されるようになった。自治医大ではB-Lynch発表以前からMatsubara-Yano(MY)縫合(後述)2)を行っていたようで,前教授の松原茂樹先生が論文化しなかったことを今でも悔やんでいる。UCSの止血機序はUCSすることで子宮収縮が促進されることと,出血している血管が結紮または圧迫止血されるということであろう。UCSが最も効果を示すのは「弛緩出血」でその止血成功率は90%をこえる。弛緩出血のなかでも血管1本から強出血を惹起するような難治性弛緩出血の存在が知られ,子宮腔内バルーンでは止血しにくいことが報告されている3)。UCSは結紮するので,難治性弛緩出血に対しても一定の効果を示す可能性がある。
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