増刊号 周産期診療のための病態生理
[新生児編]
栄養・消化器
壊死性腸炎は腸管虚血が原因なのか
宮沢 篤生
1
MIYAZAWA Tokuo
1
1昭和大学医学部小児科学講座
キーワード:
壊死性腸炎
,
dysbiosis
,
toll-like receptor
,
虚血
,
母乳
Keyword:
壊死性腸炎
,
dysbiosis
,
toll-like receptor
,
虚血
,
母乳
pp.543-546
発行日 2023年12月28日
Published Date 2023/12/28
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001364
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
壊死性腸炎の基本病因,発症機序,解剖学的背景
壊死性腸炎(necrotizing enterocolitis:NEC)は,新生児期において最も頻度が高い急性消化管疾患である。NEC罹患児のうち,極低出生体重児が90%以上を占めるとされ,在胎週数が短く,体格が小さい未熟性が強い児ほど発症リスクが高くなる。世界各国のデータベースを集積した2020年のメタ解析では,極低出生体重児のうち7%がNECを発症することが示されているが1),国や地域により罹患率が大きく異なっている。米国National Institute of Child Health and Human Development(NICHD)のデータベース解析2)では,2012年に出生した在胎28週未満の早産児の約10%がNECと診断されているが,わが国のNeonatal Research Net work(NRN)データベースを用いた解析3)では,2004~2018年に出生した出生体重1,500g未満の極低出生体重児の1.3~1.7%,日本小児科学会新生児委員会による「ハイリスク新生児医療調査」4)では,2015年に出生した出生体重1,000g未満の超低出生体重児の3.5%がNECを発症しており,諸外国に比べて著しく罹患率が低いことが示されている。しかしながら,特に消化管穿孔などで外科的治療の適応となった場合の救命率は50%程度とされ,2015年出生の超低出生体重児においては,NECもしくは限局性腸管穿孔が死亡原因の16.2%を占めており,最も多い重症感染症(21.3%)に次ぐ第2位を占めている4)。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.