特集 妊産婦死亡の現状と削減に向けた対策
各論
周産期心筋症
神谷 千津子
1
KAMIYA Chizuko
1
1国立循環器病研究センター産婦人科部
pp.382-385
発行日 2023年3月10日
Published Date 2023/3/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000821
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はじめに
心筋疾患既往のない妊産婦が,原因不明の左室収縮能低下をきたす心筋症を「周産期(産褥性)心筋症」と称する。現時点では「妊産婦」以外に疾患特異項目がなく,除外診断病名であるため,多様な疾患背景を含む疾患群と考えられる。妊産婦死亡に直結する疾患であり,早期診断が重要である。しかしながら,息切れや浮腫などの心不全症状は,健常妊産婦も感じる症状と似ているうえ,周産期心筋症の危険因子である妊娠高血圧症候群や多胎を合併した妊婦では,それらの症状がさらに増大するため,診断遅延や重症化の要因となっている。既存の心疾患合併妊娠では,循環血液量の増加に伴い,妊娠中期から後期にかけて心不全を合併する頻度が高いが,周産期心筋症による心不全は,その多くが産後に診断される。危険因子や好発時期を知り,鑑別診断に挙げることが,早期診断につながる。
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