特集 母体救急医療・母体救命の進歩
各論
主な母体救急疾患とその対応 周産期心筋症
神谷 千津子
1
KAMIYA Chizuko
1
1国立循環器病研究センター産婦人科部
pp.251-253
発行日 2022年2月10日
Published Date 2022/2/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000057
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はじめに
心筋疾患を指摘されていない妊産婦が,原因不明の左室収縮能低下をきたす心筋症を周産期(産褥性)心筋症と称する。現時点では「妊産婦」以外に疾患特異項目がなく,除外診断病名であるため,多様な疾患背景を含む疾患群と考えられる。わが国における頻度は決して高くはないが,妊産婦死亡にも直結する疾患であり,早期に診断することが大切である。しかしながら,息切れや浮腫などの心不全症状は,健常妊産婦も感じる症状と似ているため,診断遅延や重症化の要因となっている。高齢,妊娠高血圧症候群や多胎が危険因子として知られ,6割以上の患者がこれらの危険因子を有している。既存の心疾患合併妊娠では,循環血液量の増加に伴い,妊娠中期から後期にかけて心不全を合併する場合が多いが,周産期心筋症による心不全は,その多くが産後に診断される。危険因子や好発時期を知り,鑑別診断に挙げることが,早期診断につながる。
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