特集 妊産婦死亡の現状と削減に向けた対策
各論
大動脈解離
椎名 由美
1
SHIINA Yumi
1
1聖路加国際病院心血管センター循環器内科
pp.379-381
発行日 2023年3月10日
Published Date 2023/3/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000820
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妊産婦における大動脈解離
若年女性(45歳以下)における大動脈解離の発症率は10万人あたり0.4人とまれだが1),もっとも注意すべき致死的疾患の一つである。妊娠による生理的な変化(エストロゲン増加などの内分泌学的変化により大動脈中膜の組織学的変化)を生じ,非妊娠時よりも大動脈の脆弱性が増す。急性大動脈解離の分類として,一般的にはスタンフォード分類が用いられ,上行大動脈に解離が及んでいる場合にはA型(よりハイリスク),下行大動脈のみの解離の場合にはB型とよぶ。さらに偽腔閉塞型と偽腔開存型の2つに分けられ,偽腔開存型(よりハイリスク)に関しては注意が必要であり,解離が遠位部方向に進行したり,逆行性解離により上行大動脈に解離が及び,心タンポナーデや冠動脈解離による急性心筋梗塞を合併することがある。B型であっても血栓閉塞した偽腔から腎動脈や腹腔動脈や腸間膜動脈が出ている場合,虚血による臓器障害を生じることがある。一般的にはA型の場合には外科治療,B型の場合には保存的治療(入院にて血圧管理)を行うが,妊産婦の場合には大動脈の脆弱性により,A型解離外科治療後のB型解離発症,下行大動脈が急激に拡大し,大動脈破裂を起こし死亡することもあり,上行大動脈置換施行後であれば死亡リスクがないということではない。
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