特集 多胎児と家族への支援に取り組もう
育児支援
多胎児への育児支援―言語発達
稲森 絵美子
1
INAMORI Emiko
1
1東京医科大学病院小児科・思春期科臨床心理士
pp.1285-1288
発行日 2022年9月10日
Published Date 2022/9/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000323
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はじめに
言葉は人が社会で生きていくための重要なコミュニケーションツールである。言葉の基礎は,乳児期からすでに始まっている。親をはじめとする周りの人が,乳児を「心をもつ存在」としてとらえ,その表情や行動から「心」を推測してかかわるとき,乳児は「通じ合っている」喜びや心地よさを体験し,コミュニケーションへの意欲が促進されていく。とくに,9~10か月前後に親と子どもの間でモノを共有する「共同注意」が成立するようになると,乳児は指差しやアイコンタクトを通じて,親と「話題」を共有できるようになる。また,自分が発した声に親が応えてくれたり,ボールを投げ合ったりというやり取りのなかで,役割を交代しながら対話を続けるというコミュニケーションの基礎を身につけていく。また,家族をはじめとする周囲の人たちが音声を発するのを聞くなかで,次第にその音声があるモノやコトを表象していることに気づき,言葉として理解し始める。そして,自分の表象を周りの誰かと共有しようとするとき,子どもは自分のなかに蓄えたその言葉を使って話し始める。
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