特集 周産期と最先端サイエンス
境界領域:先天性疾患・遺伝性疾患への挑戦
ダウン症治療研究最前線 ダウン症の病態を知る―一過性骨髄異常増殖症(TAM)の病態解明
北畠 康司
1
KITABATAKE Yasuji
1
1大阪大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター
pp.1004-1007
発行日 2022年7月10日
Published Date 2022/7/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000246
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はじめに
ダウン症候群は21番染色体のトリソミーによって発症する染色体異常症である。700人に1人という頻度であり多彩な合併症を呈する。とくに新生児科医にとって忘れてはならないのが一過性骨髄異常増殖症(transient abnormal myelopoiesis:TAM)とよばれる病態である。ダウン症新生児の約10%が罹患する類白血病状態であり,その約8割は生後1か月以内に自然寛解するものの,残りの2割は芽球の過剰な増殖によって肝線維症から肝不全を呈し重篤な転帰をたどる。さらには自然寛解した症例のうちの約3割は数年以内にダウン症候群関連骨髄性白血病(myeloid leukemia of Down syndrome:ML-DS)に発展することから,「21トリソミー → TAM → ML-DS」という一連の病態は,白血病の多段階発症機構を解明するための最適な研究モデルになると考えられる1,2)。
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