特集 周産期と最先端サイエンス
境界領域:先天性疾患・遺伝性疾患への挑戦
ダウン症治療研究最前線 Erg遺伝子とDown症候群に対する胎児治療の可能性
石原 慶一
1
,
左合 治彦
2
ISHIHARA Keiichi
1
,
SAGO Haruhiko
2
1京都薬科大学・病態生化学分野
2国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター
pp.1001-1003
発行日 2022年7月10日
Published Date 2022/7/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000245
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はじめに
Down症候群(DS)では神経発達障害が必ずみられる。DSの知的障害に対して種々の薬物療法が試みられてきたが,未だ確立されたものはなく,最近のGABAA-α5受容体阻害薬バスミサニルやNMDA受容体拮抗薬メマンチンの二重盲検ランダム化比較試験でも有効性は認められなかった1,2)。しかし,DS胎児の脳病理解析や頭部MRI解析あるいはヒト患者由来人工多能性幹細胞(iPSC)を用いたオルガノイド研究などの研究成果から,DSでは神経新生低下などの脳病変がすでに胎生期において認められることから,胎児治療への関心が高まっている3)。本稿では,筆者らがDSモデルマウスを用いて同定したDSの神経発達遅延関連遺伝子を概説するとともに,DS知的障害に対する胎児治療の可能性について考えたい。
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