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Down症候群は,21トリソミーの染色体異常を有する疾患であり,新生児期には,いったん増加した芽球様細胞が自然消退するtransient abnormal myelopoiesis(TAM)という状態がしばしば見られ,先天性白血病との異同が論議の的となってきた.特徴としては,①芽球の増加は通常一過性で,自然消退し良性である,②芽球が多数存在するにもかかわらず,貧血,好中球減少,血小板減少は通常伴わない,③骨髄中の芽球より末梢血中の芽球の占める割合のほうが大きい,④芽球は21トリソミー以外の付加的染色体異常を伴わない,などが挙げられる1).TAMの症例のうち,Down症候群としての外見上の特徴を持たないものも,染色体分析を行うとモザイクであった例が数例報告されている.また体細胞の染色体分析では正常核型を示したにもかかわらず,血液細胞は21トリソミーのモザイクを示したという報告もあり,21番目の染色体異常とTAMとの関連性を強く示唆している.
近年,TAMの芽球様細胞において表面抗原であるグリコプロテインIIb/IIIa陽性率が高いことが知られるようになった2).また,電子顕微鏡による血小板ペルオキシダーゼ(PPO)活性陽性を示す細胞が多いことも知られるようになった2).
グリコプロテインIIb/IIIaは,非常に幼若な巨核芽球から血小板にまで広く分布しており,巨核芽球系細胞の指標とされているが,Fraserら3)は多能性血液幹細胞の表面抗原であることを報告している.筆者も,メチルセルロース法によるクローン性培養や液体培養でTAMの芽球様細胞が多系統の血液細胞に分化する症例を報告したの.臨床的にも芽球様細胞の減少に伴い,好中球,好酸球,好塩基球の増加が見られる症例がある.また電顕細胞化学的に見ると,芽球様細胞は,赤芽球系細胞に見られるθ穎粒を持つもの,好塩基球穎粒を持つもの,巨核球のα顯粒を持つものなど,さまざまな芽球が認められる2,5).
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