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はじめに
帝王切開による分娩の割合は世界中で増加しており,欧米や一部の先進国では30%をこえている。わが国でも,2017年には全体で20.4%を占めており,年々増加の一途をたどっている。表に示すような医学的または産科的な合併症がある場合に妊娠を継続することは,母体および胎児のリスクを高める可能性がある1)一方,合併症のない妊娠をfull-term(妊娠39週0日~41週6日)まで継続することは,児にとって明らかに有益である。1990年代から,American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)はガイドラインにおいて,新生児の呼吸障害を予防するために予定帝王切開の時期は妊娠39週以後が望ましいと述べてきた。しかしながら,医療者もしくは患者の事情により,early term(妊娠37週0日~38週6日)における既往帝王切開や胎位異常に対する帝王切開術を含む「医学的適応を伴わない選択的分娩(non-medically indicated delivery:NMID)」が増加したことで,early termにおける分娩が大きく増加していたことがわかった。そこでMarch of Dimes, NICHD, Society for Maternal Fetal Medicine, ACOGはearly termにおけるNMIDを減らすべく全国的な啓発活動を行い1),欧米では2006年から2014年にかけてearly termでの分娩率,周産期死亡率がともに低下した2)。一方,わが国では現在もさまざまな理由からearly termでの帝王切開が広く行われている。産婦人科診療ガイドライン産科編2020 CQ416「選択的帝王切開時に注意することは?」においても,「選択的帝王切開の施行時期は医療施設の体制,水準などを総合的に判断して決定する。(推奨レベルB)」とされている。
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