特集 Controversies in perinatology 2023 産科編
CRP上昇の未破水切迫早産―抗菌薬の投与を画一的には行わない
神谷 亮雄
1
,
吉田 彩
1
,
森川 守
1
KAMIYA Akio
1
,
YOSHIDA Aya
1
,
MORIKAWA Mamoru
1
1関西医科大学産科学婦人科学講座
pp.1651-1654
発行日 2022年12月10日
Published Date 2022/12/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000700
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
子宮内感染症は,羊水,胎盤,胎児,羊膜,脱落膜のいずれかの炎症を伴う感染症であり,未破水の切迫早産の主要な原因の一つである1)。細菌は,母体の全身感染症からの経胎盤感染や,経卵管感染,腟や頸管から上行性感染を経て子宮内にいたると考えられている。絨毛膜羊膜炎(chorioamnionitis:CAM)は臨床的CAMと組織学的CAMに分類される。臨床的CAMは母体発熱,白血球増加,母体頻脈,子宮圧痛,腟分泌物の悪臭といった臨床徴候から診断され,Lenckiらの診断基準が一般的に用いられる2)。組織学的CAMは,子宮内感染に伴う絨毛,羊膜,胎盤の炎症によって定義され,母体の臨床症状に現れないこともある一方,脳性麻痺の発症との関連性が示されている3)。自然早産における組織学的CAMは,妊娠週数が浅いほど高度で,重症度も高いという報告があり4),とくに超早産期における未破水の切迫早産で発熱や炎症反応上昇がみられる場合は,抗菌薬投与が妊娠期間を延長し,児の予後を改善することを期待する傾向にある。われわれは,臨床において炎症反応が上昇した切迫早産を頻繁に経験するが,子宮内感染症を原因とするか否かについては,胎盤の組織学的診断を待たないと最終診断ができないため妊娠期には診断できない場合が多く,結果として過小あるいは過剰な抗菌薬治療につながっている。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.