特集 母体救急医療・母体救命の進歩
各論
主な母体救急疾患とその対応 羊水塞栓症
東堂 祐介
1
,
小田 智昭
1
,
伊東 宏晃
1
TODO Yusuke
1
,
ODA Tomoaki
1
,
ITOH Hiroaki
1
1浜松医科大学産婦人科
pp.265-269
発行日 2022年2月10日
Published Date 2022/2/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000061
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はじめに
羊水塞栓症は,約2万~3万分娩に1例とまれだが,急激に呼吸循環動態が悪化し,母体死亡につながる疾患の一つである。妊娠可能な全年齢層で,とくにリスクのなかった妊産婦にも発生しうる。典型的には分娩中,分娩直後に呼吸困難,呼吸不全,意識障害,ショックや子宮出血などの症状を呈する。また,播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併し,止血に難渋するケースがほとんどである。しかし,確定診断のための症状や検査は未だ知られておらず,臨床症状と鑑別疾患の除外により診断する。呼吸循環不全,DIC,子宮弛緩に対して同時に対応が必要であり,多職種スタッフを迅速に集めることが重要である。羊水塞栓症のリスク因子は,年齢35歳以上,多胎妊娠,分娩誘発,前置胎盤,器械分娩,帝王切開などが知られている1)。
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