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遭遇しやすい典型ケース
症例1 : 心肺虚脱型羊水塞栓症
41歳経産婦,分娩予定日超過のため妊娠41週に分娩誘発を行った.オキシトシン点滴開始4時間後,子宮口5cm開大時に自然破水した.その5分後に呼吸困難,気分不快を訴え,胎児持続性徐脈を認めた.全身をガクガクとふるわせたあと意識消失した.腹部は板状硬であった.すぐに手術室で超緊急帝王切開を行った.子宮切開時に血性羊水を認めた.児Apgar scoreは1点(1分値)/3点(5分値)で臍帯動脈血pH 6.8であった.児娩出時に母体は心停止したが心肺蘇生を行い,数分で自己心拍再開した.胎盤後血腫は認めなかった.胎盤娩出後から非凝固性出血が子宮内腔および子宮切開部より続き,子宮は弛緩した状態のまま用手圧迫や子宮収縮薬を使用してもまったく収縮しなかったため,子宮腟上部切断術を行った.発症時ヘモグロビン濃度(Hb)9.0g/dL,血小板数(Plt)10.8万/μL,フィブリノゲン値(Fib)<50mg/dL,プロトロンビン時間(PT)22.6秒〔PT時間−国際標準比(PT-INR)1.92〕,フィブリン分解物質(FDP)>1,200μg/mL,Dダイマー(DD)>600μg/mLであった.大量輸血,フィブリノゲン濃縮製剤の投与を行ったが,再び心停止したあとは自己心拍再開せず死亡した.羊水塞栓症血清マーカーは亜鉛コプロポルフィリン-1(ZnCP1) 3.0 pmol/mL,シアリルTn(STN) 180.0U/mL,C3 69.0mg/dL,C4 7.0mg/dL,C1インヒビター活性 <25%とすべて異常値であった.病理解剖を行い,心肺虚脱型羊水塞栓症と診断した.
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